「チーズは芸術だ!」 第2章_美味しさを秘めている五感の仕組み
- 一般社団法人 日本チーズアートフロマジェ協会
- 3月1日
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更新日:3月5日
美味しさを秘めている五感の仕組み
チーズの風味や構造は、その土地の自然環境や文化の影響を強く受けています。例えば、スイスの「グリュイエール」や「エメンタール」は、冷涼で湿度の高いアルプスの牧草地で育った乳牛のミルクを使用し、長期熟成を経ることで、力強く深みのある風味を生み出します。これらのチーズには、ナッツや草のような香りが宿り、スイス特有の自然環境がその味わいに反映されています。一方、フランスのノルマンディー地方で作られる「カマンベール」は、海洋性気候と湿潤な環境で育った乳牛のミルクを使用し、フレッシュでクリーミーな口当たりが特徴です。こうした地域の気候や生態系が、チーズの個性を形作る要素となっているのです。
チーズはその土地の文化や民族思想とも密接に結びついています。例えば、イギリスの「チェダー」やスイスの「ラクレット」は、それぞれの国の食文化やライフスタイルを反映しており、地域の農業や家庭料理、宗教儀式などがチーズの製法や風味に影響を与えています。これらの背景を理解することで、チーズの持つ深い意味や美しさをより深く感じることができるでしょう。
チーズの芸術性を理解するためには、感覚の科学的視点を取り入れることが重要です。味覚は単なる五基本味(甘味・塩味・酸味・苦味・うま味)にとどまらず、嗅覚、触覚、視覚、聴覚と相互に作用しながら、総合的な味わいを形成します。例えば、熟成チーズの芳醇な香りは嗅覚を刺激し、脳内で味覚と統合されることで、より奥深い風味として認識されます。また、舌触りや噛み応えは、食べる人の記憶に刻まれ、味わいの印象を強くします。
視覚もチーズの印象に大きな影響を与えます。白カビが咲いた「ブリー」や「カマンベール」の滑らかな表面、青カビが織りなす「ゴルゴンゾーラ」の大胆な模様、ハードチーズの断面に広がるクリスタル状のアミノ酸の結晶。これらの視覚的な要素は、私たちの期待感を高め、実際の味の感じ方にも変化をもたらします。科学的研究でも、見た目によって同じチーズの味わいが異なると感じられることが証明されています。
また、聴覚もチーズ体験の一部です。例えば、「パルミジャーノ・レッジャーノ」を削る際の「ザクッ」という音や、「ラクレット」が溶けて皿に落ちる際の「ジュワッ」という音は、味覚と感覚を刺激し、期待感を高める効果を持っています。
このように、チーズを芸術として捉えるためには、自然環境や文化的背景に加え、五感の相互作用を理解することが不可欠です。チーズは単なる食品ではなく、自然と文化、そして感覚の科学が融合した結晶であり、その奥深い魅力を知ることで、私たちはより豊かにチーズを楽しむことができます。
その土地の風景や歴史、人々の想いが詰まったチーズを味わうことで、食べることは単なる栄養補給を超え、深い満足感や感動をもたらしてくれます。チーズを芸術として観ることで、私たちは自然や文化に対する理解を深め、五感を駆使してその美味しさを味わうことができるのです。
